ハロゲン物質がアルミ電解コンデンサに及ぼす影響
- フラックスの影響
- 洗浄剤について
2-1. アルコール系
2-2. HCFC代替フロン(フロン225)
2-3. その他の溶剤について - 固定剤、コーティング剤について
- 燻蒸の影響について
1.ハロゲンの影響について
アルミ電解コンデンサは使用している電解液、封口材料等により、程度の差はありますがハロゲンイオン(特に塩素、臭素イオン)に弱いため注意が必要です。ハロゲン化合物などを含有するフラックス・溶剤(洗浄剤、固定剤、コーティング剤)・燻蒸剤を使用した場合、コンデンサの封口部を通してハロゲン化合物がコンデンサの中に浸透し以下のような腐食反応が起こります。この腐食反応によって漏れ電流の増加、圧力弁作動、オープンなどの不具合に至る場合があります。この腐食反応は、印加電圧および、温度が高いほど加速されます。
【腐食反応】
- ハロゲン化合物の分解
- 腐食反応
RX:ハロゲン化合物
X- :ハロゲンイオン(Cl-、F-、Br-等)
コンデンサ素子中に浸透したハロゲン化合物は、(21)式で表す通り電解液と接触し加水分解してハロゲンイオンを遊離します。ハロゲンイオンは酸化アルミ及びアルミと反応してAlX3を生成し((22)、(23)式)、さらに、AlX3は加水分解して水酸化アルミを生成します((24)式)。(24)式で生成されたハロゲンイオンは(22)~(24)式の反応を繰り返し腐食が進行します。以下に、フラックスの使用、推奨洗浄剤、固定剤・コーティング剤の使用、燻蒸処理についての注意点を記します。
1 フラックスの影響
普通、フラックスは活性剤として、コンデンサに腐食を起こすイオン性ハロゲン化合物を配合していますが、最近は“ノンハロゲン”または“ハロゲンフリー“と称するフラックスの中に非イオン性ハロゲン化合物活性剤を配合する例が増えています。ノンハロゲンフラックスの中にはイオン性ハロゲンは含まないものの、非イオン性ハロゲン化合物が多量に含まれているものもあり、コンデンサに悪影響を与える可能性があります。2 洗浄剤について
洗浄保証されたアルミ電解コンデンサを洗浄する際は、次の内容を確認して下さい。- 洗浄剤の汚染管理(電導度、pH、比重、水分量など)をして下さい。
- 洗浄後、洗浄液の雰囲気中または密閉容器の中で保管しないで下さい。
また、プリント配線板及び電解コンデンサに洗浄液が残留しないように(カテゴリ上限温度以下の)熱風で10分間以上充分に乾燥させて下さい。一般のアルミ電解コンデンサはハロゲンイオンに弱く(特に塩素イオン)、使用している電解液、封口材料などにより程度の差はありますが、一定以上のハロゲンイオンが内部に侵入すると、使用中に腐食反応を起こし大幅な漏れ電流増加、発熱、圧力弁作動、オープンなどの破壊故障に至ります。
最近の地球環境問題(オゾン層破壊による地球の温暖化、環境破壊)により、従来使用されていたフロン113(フレオンなど)、トリクレン、トリクロルエタンに代わる次の新溶剤で洗浄される場合、許容洗浄条件の範囲内として下さい。
2-1. アルコール系
- 高級アルコール系(新溶剤)
パインアルファST100S(荒川化学工業)
クリンスルー750H, 750HS, 750J(花王) - IPA(イソプロピルアルコール)
【対象製品】
端子形状 | 対象シリーズ |
チップ形 | 全シリーズ |
リード形 | 全シリーズ |
基板自立形 | 全シリーズ(100Vdc以下) |
【許容洗浄条件】
温度60℃以下、10分間以内の液中浸漬または超音波洗浄とする。
【注意事項】
- 他の部品・基板でコンデンサ表面の表示部分がこすられない事。また、液中シャワー洗浄はコンデンサ表示部分に悪影響を与える可能性があります。
- 洗浄方法によって製品表示消え、表示のにじみ等が発生する場合があります。
- 最終洗浄工程に水洗浄を行った場合、乾燥工程でスリーブ膨れや収縮を生じる場合があります。
- 弱アルカリ性の溶剤(クリンスルー750HS、750J等)は、最終洗浄工程でアルカリ成分が残留しない条件管理が必要になります。
- 洗浄剤に対するフラックス濃度は2wt%以下で管理願います。
- IPA(イソプロピルアルコール)は、アルコールの洗浄性を上げるため、キシレン等を混ぜて洗浄される場合、コンデンサ封口部を膨潤させることがありますのでご注意下さい。
- 使用される洗浄剤やその条件によっては、スリーブ表面の光沢消失や白色化等の表面変化が発生する場合がありますのでご注意下さい。
2-2. HCFC代替フロン(フロン225)
AK225AES (旭硝子)【許容洗浄条件】
許容洗浄条件としては浸漬、超音波のいずれかの方法で5分間以内(KREは2分間以内、SRMは3分以内)となります。HCFC代替フロンは地球環境問題の観点から推奨していません。
【対象製品】
端子形状 | 対象シリーズ |
---|---|
チップ形 | MVE(~63Vdc), MZS, MZL, MZR, MZJ, MZA, MVY(6.3 ~ 63Vdc), MZF, MZE, MZK, MLA, MLF, MLE, MLK, MVL, MVJ, MHS,MVH(~50Vdc), MHL, MHB, MHJ, MXB, MHK |
リード形 | SRG, KRG, KMQ(~100Vdc), LZA, LXZ, LXY, LXV, LE, GPA, GVA, GXF, GXL, GPD, GVD, GQB, LBV, LBG |
コンデンサを基板に密着してご使用される場合、コンデンサと基板面との間に洗浄液が残留する事がありますので、洗浄直後に50~85℃の熱風乾燥を10分間以上実施し、洗浄液が封口部に残らないようにして下さい。
2-3. その他の溶剤について
以下の洗浄剤で洗浄しないで下さい。コンデンサが次の不具合に至る場合があります。- ハロゲン系 → 電解コンデンサの電蝕による故障
- アルカリ系 → アルミケースの腐食(溶解)
- テルペン系・石油系 → 封口ゴムの劣化
- キシレン・トルエン → 封口ゴムの劣化
- アセトン → 表示の消失
3. 固定剤、コーティング剤について
アルミ電解コンデンサに対して、固定剤・コーティング剤を使用する際は、次の内容を確認して下さい。- ハロゲン系溶剤などを含有する固定剤、コーティング剤は使用しないで下さい。
- プリント回路板とコンデンサ封口部との間にフラックス残渣及び汚れが残らないようにして下さい。
- 固定剤・コーティング剤を付着させる前に洗浄剤を乾燥させて下さい。また封口部の全面を塞がないで下さい。
- 熱硬化条件によっては、スリーブ膨れや収縮が生じる場合があります。固定剤・コーティング剤の熱硬化条件はご相談下さい。
- アルミ非固体電解コンデンサの封口部を完全に樹脂モールドした場合、コンデンサ内部の内圧を適度に逃すことができないため、危険な状態になることが考えられます。また、樹脂中にハロゲンイオンが多い場合、その成分が封口ゴムを通して内部に侵入し、不具合を発生させることがありますので、ご注意下さい。
- 固定剤、コーティング剤に使用されている溶剤の種類によってはスリーブ表面の光沢消失や白色化等の表面変化が発生する場合がありますので、ご注意下さい。
- 固定剤、コーティング剤にキシレン等の有機溶剤が含有されている場合があります。この溶剤は封口ゴムを劣化させる可能性があり、フラックス成分がコンデンサ内部へ侵入し易くなりますので、ご注意下さい。
4. 燻蒸の影響について
電子機器類の輸出入に際し、臭化メチル等のハロゲン化合物で燻蒸処理が施される場合があります。この場合、アルミ電解コンデンサが臭化メチル等のハロゲン化合物に触れるとハロゲンイオンによる腐食反応を起こす危険性があります。当社では輸出入に際して、燻蒸処理が不要となるように梱包方法等に配慮しています。お客様での電子機器製品、半製品及びアルミ電解コンデンサ単体の輸出入に際し、燻蒸処理の有無、梱包の最終形態等についてご注意下さい。(段ボール、ビニール等による梱包でも、燻蒸ガスが内部に侵入する危険性があります。
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