コモンモードチョークコイルの等価回路構築(実践)
目次
コモンモードチョークコイルの等価回路構築(理論)で示した構築手順を、以下に実践します。(使用サンプル 品番: LDFL002302LS-V0E)
1. 鉄損となる抵抗分、浮遊容量の取得
下図のように、1次側、2次側の巻線の両端を接続してインピーダンスアナライザに接続し、インピーダンスを測定します。コモンモードチョークコイルの等価回路構築(理論)のSTEP1にある、C,R,Loを求めます。
C |
R
|
Lo | |
測定値 | 4.2pF | 5.8kΩ | 15mH |
回路入力値 | *2.1pH (1/2倍) | *11.6kΩ (2倍) | 15mH |
*印:測定値を1次側、2次側コイルへ分配のための演算
2. 漏れインダクタンスの周波数特性
次のように片側(2次側)の巻線をショートさせ1次側の巻線をインピーダンスアナライザに接続し、漏れインダクタンス値Lℓeakを測定します。 コモンモードチョークコイルの等価回路構築(理論)のSTEP2にあるLℓeakを求めます。Lℓeak | |
測定値 | Ls=11μH |
漏れインダクタンス | *5.5μH (1/2倍) |
*印:測定値を1次側、2次側コイルへ分配のための演算
3. 配線の直流抵抗
2次側を開放した状態で、1次側コイルの両端をmΩメータで直流抵抗分を測定します。 コモンモードチョークコイルの等価回路構築(理論)のSTEP3にあるDCRを求めます。DCR | |
測定値 | 60mΩ |
回路入力値 | *30mΩ (1/2倍) |
*コイル両端に分配の為の演算
4. コモンモードインピーダンスの考察
鉄損となる抵抗分、巻線容量、漏れインダクタンスの存在により、下記インピーダンスの周波数特性は、周波数により支配的な成分が推測できます。5. 結合係数kの設定方法
コモンモードチョークコイルの等価回路構築(理論)のSTEP2により、漏れインダクタンスLℓeakから結合係数kは、以下の式で示されます。- Ls
- : 2次側コイルSHORT時の1次側コイルから測定したインダクタンス
- Lo
- : 1回路分のインダクタンス(漏れインダクタンスを含む)
結合係数kは、コモンモードチョークコイルの特性把握に最重要なパラメータとなります。
6. LDFL002302LS-V0Eの等価回路完成
LDFL002302LS-V0Eの実際の周波数特性をベースに等価回路を作成しました。(コモンモードチョークコイルの等価回路構築(理論)より)
等価回路の各成分 | 回路 | 数値(入力値) |
浮遊容量 | C | 2.1pF |
鉄損(磁性体のロス) | R | 11.6kΩ |
自己インダクタンス | Lo | 15.0mH |
結合係数 | k | 0.9996333 |
銅損(電線のロス) | DCR | 30mΩ |
ダミー抵抗 | Rd | 1GΩ |
7. 実測とシミュレーション比較
上記の等価回路モデルでのシミュレーションと実測のコモンモードインピーダンスを比較すると下記のようにほぼ一致する結果となりました。8. 等価回路モデル検証まとめ
コモンモードチョークコイル等価回路の構築について、鉄損となる抵抗分、巻線容量、漏れインダクタンスの存在及び、その数値を正確に取得することで実用に耐える回路モデル構築ができます。- タグ
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