株主・投資家情報経営方針

トップメッセージ

2024年3月期の概況

代表取締役社長 上山 典男

2024年3月期における世界経済は、米国では個人消費が堅調に推移するなど景気は回復基調で推移いたしました。一方、欧州ではウクライナ情勢の長期化や金融引き締めの影響等により総じて停滞感が強まり、中国においても不動産市場の調整等の影響から回復ペースが鈍化いたしました。また、日本国内におきましては、世界経済の減速等の影響により企業の生産活動に停滞が見られたものの、底堅い設備投資需要やインバウンド需要の回復などが下支えとなり、景気は緩やかな回復傾向で推移いたしました。

日本ケミコングループを取り巻く市場環境につきましては、自動車関連市場は半導体の供給不足緩和により自動車の生産活動が正常化し、加えて電動化・電子化の進展等により堅調に推移いたしました。一方、産業機器関連市場は中国での景況感悪化による設備投資の伸び悩み等により総じて低調に推移しました。また、ICT関連市場はコロナ禍での特需による反動が予想以上に大きく、パソコンやデータセンター向けサーバー等の在庫調整が長引きました。

このような経営環境のもと、当社グループは第10次中期経営計画に掲げた諸施策を着実に実行してまいりました。特に、戦略市場である車載市場やICT市場において、高付加価値な製品の拡販に注力いたしました。また、ハイブリッドタイプのコンデンサに加えて、電気自動車の車載充電器などへの活用が期待されるコイル製品の販売拡大にも取り組んでまいりました。一方で、収益性の向上を図るため、コストアップの要因となっていた一部の製品の生産を終了し、生産効率の高い製品への移行を推進してまいりました。

製品開発につきましては、業界最高の高容量化と従来品からの高リプル電流化を両立した車載用途の導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサ「HXKシリーズ」を開発したほか、デジタル家電製品等の電源に使用されるリード形アルミ電解コンデンサにおいて、用途に最適な製品サイズを追加してバリエーションの充実を図るなど、戦略市場での競争力強化を推進いたしました。

加えて、当社は資本政策としてジャパン・インダストリアル・ソリューションズ第参号投資事業有限責任組合との間で出資契約を締結し、種類株式の第三者割当の方法により総額150億円の資金調達を行いました。また、三瑩電子工業株式会社との間で出資契約を締結し、普通株式の第三者割当の方法により、24億円の資金調達を行いました。この調達資金は、今後需要の増加が見込まれるハイブリッドコンデンサの生産能力の増強を図るための製造棟の建設など中期経営計画における成長分野への設備投資資金に充当いたします。これらの結果、2024年3月期の連結業績につきましては、売上高は1,507億40百万円(前期比6.9%減)となり、営業利益は94億22百万円(前期比27.2%減)、経常利益は79億13百万円(前期比28.0%減)となりました。しかしながら、独占禁止法関連損失の計上などにより、親会社株主に帰属する当期純損失は212億91百万円(前期親会社株主に帰属する当期純利益22億73百万円)となりました。2024年3月期の普通株式に対する期末配当につきましては、誠に遺憾ながら見送らせていただきました。株主の皆様には深くお詫び申し上げる次第でございます。

部門別の状況

2024年3月期における事業の部門別の状況は次のとおりであります。

  1. コンデンサ部門(1,410億82百万円、売上総額の93.6%)
    ICT・産業機器関連市場の需要が減少したことなどにより、当部門の売上高は前期比5.5%の減少となりました。
  2. 機構・その他部品部門(35億円、売上総額の2.3%)
    CMOSカメラモジュール及びインダクタ(コイル)の需要が減少したことなどにより、当部門の売上高は前期比22.2%の減少となりました。
  3. コンデンサ用材料部門(46億15百万円、売上総額の3.1%)
    アルミ電解コンデンサ用電極箔の需要が減少したことなどにより、当部門の売上高は前期比19.5%の減少となりました。
  4. その他の部門(15億41百万円、売上総額の1.0%)
    リセール品の需要が減少したことなどにより、当部門の売上高は前期比34.3%の減少となりました。

2025年3月期の見通し

今後の見通しにつきましては、国内では雇用・所得環境が改善するもとで個人消費が持ち直すなど、景気は緩やかな回復基調で推移することが見込まれるものの、世界経済全体では、これまでの欧米地域での金融引き締め政策の影響や、中東情勢・ウクライナ情勢等の地政学リスクなど景気の下振れリスクは依然として存在しており、当社グループを取り巻く経営環境は予断を許さない状況が続くものと予想されます。加えて、サステナビリティに関する取り組みが企業経営の中心的な課題になる中で、環境面においては、世界的に気候変動リスクへの関心が高まる中、カーボンニュートラルを始めとする環境負荷の低減に向けた取り組みが求められるなど、事業活動を通じた社会課題への貢献が求められております。

当社グループに関連するエレクトロニクス市場は、車載市場においては、生産台数の増加に加えて、引き続き電動化・電子化が進み自動車1台当たりの部品搭載数の増加による需要拡大が見込まれます。また、ICT市場においては、生成AIサーバーの急成長や従来型サーバーの在庫調整が終息し、パソコン需要も含めて需要の回復が見込まれます。また、産業機器市場においては、省人化投資や半導体製造装置の回復も期後半に期待されます。

このような状況のもと、当社グループは引き続き第10次中期経営計画の各重点施策を着実に実行に移すことにより、高収益体質への転換を図ってまいります。5つの戦略市場のうち車載市場、ICT市場と産業機器市場を最重要戦略市場と位置づけ、電動車両やAIサーバー等の成長分野に向けてハイブリッドコンデンサを中心とした高付加価値製品の拡販活動を実施してまいります。また、生産工場におけるTPM活動(Total Productive Management)の徹底や生産実行システムの導入等を通じて更なる収益性の向上を図ってまいります。

なお、2025年3月期(2024年度)の連結業績予想につきましては、売上高1,530億円(前期比1.5%増)、営業利益115億円(前期比22.0%増)、経常利益100億円(前期比26.4%増)、親会社株主に帰属する当期純利益74億円(前期親会社株主に帰属する当期純損失212億91百万円)を見込んでおり、為替レートは1米ドル145円を前提としております。

2024年6月27日
代表取締役社長 上山 典男