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2025年3月期通期連結会計期間の概況
2025年3月期通期連結会計期間における世界経済は、米国では個人消費が堅調に推移するなど景気は総じて回復基調で推移いたしました。一方、欧州経済は持ち直しの動きが見られましたが、ドイツを始めとした製造業の不振が長期化しており景気回復のペースは緩慢なものとなりました。また、中国においても不動産不況の継続や個人消費の停滞を背景に景気は緩やかな減速傾向が続きました。日本国内におきましても、景気は総じて緩やかな回復基調で推移したものの、企業の生産活動は弱含みで推移いたしました。なお、こうした状況の中で年明け以降、米国の通商政策の見直しにより世界経済の下振れリスクが高まり、先行きの不透明感も強まってまいりました。
日本ケミコングループを取り巻く市場環境につきましては、ICT関連市場は米国IT大手等によるデータセンター投資が拡大し、生成AIサーバーを含むサーバー需要が高まり堅調に推移いたしました。一方、自動車関連市場は、世界的にEV市場の成長が減速したことから、自動車メーカー各社が相次いでEV戦略を見直したことに加え、部品の在庫調整の影響もあり総じて低調に推移いたしました。また、産業機器関連市場は、中国経済の低迷など景気の先行き不透明感により企業の設備投資マインドが減退したことで在庫調整も長期化し、依然として厳しい市場環境が継続いたしました。
このような経営環境のもと、当社グループは成長が見込まれる車載市場、産業機器市場、ICT市場を戦略市場と位置づけ、ハイブリッドコンデンサ等の高付加価値品の拡販を積極的に進めてまいりました。また、インドに新たな販売拠点を開設し、2024年12月より本格的な営業を開始いたしました。生産面では、ケミコン東日本株式会社宮城工場にハイブリッドコンデンサの製造棟を新設し、同年10月より生産活動を開始いたしました。また、製品や材料の品質管理工程を一部自動化することで人為的ミスによる品質不良の低減を図るなど、引き続きスマートファクトリー化を進めてまいりました。
当期の製品開発については、発熱量の大きいAIサーバーの普及に伴い、近い将来データセンターにおけるサーバーの冷却方式が「液浸冷却」に移行することをにらみ、液浸冷却に対応したアルミ電解コンデンサを業界で初めて開発いたしました。また、リフロー後の漏れ電流値を業界で初めて保証した導電性高分子アルミ固体電解コンデンサ「PXYシリーズ」の開発や、導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサ「HXKシリーズ」の製品サイズ拡充などに取り組みました。
これらの結果、当期の連結業績につきましては、売上高は1,226億84百万円(前期比18.6%減)となり、営業利益は37億40百万円(前期比60.3%減)、経常利益は15億68百万円(前期比80.2%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は37百万円(前期親会社株主に帰属する当期純損失212億91百万円)となりました。
このような状況を踏まえ、当期の普通株式に対する期末配当につきましては、誠に遺憾ながら見送らせていただきたく、何卒ご了承賜りますようお願い申し上げます。
部門別の状況
2025年3月期通期連結会計期間における事業の部門別の状況は次のとおりであります。
- コンデンサ部門(1,123億19百万円、売上総額の91.6%)
産業機器関連市場の需要が減少したことなどにより、当部門の売上高は前期比20.4%の減少となりました。 - 機構・その他部品部門(34億41百万円、売上総額の2.8%)
インダクタ(コイル)の需要が減少したことなどにより、当部門の売上高は前期比1.7%の減少となりました。 - コンデンサ用材料部門(57億3百万円、売上総額の4.6%)
アルミ電解コンデンサ用電極箔の需要が増加したことなどにより、当部門の売上高は前期比23.6%の増加となりました。 - その他の部門(12億20百万円、売上総額の1.0%)
リセール品の需要が減少したことなどにより、当部門の売上高は前期比20.8%の減少となりました。
次期の見通し
今後の見通しにつきましては、米国の相互関税を始めとする各種関税措置による世界経済への下押し圧力や、中東・ウクライナ情勢等の地政学リスクの高まりなど、当社グループを取り巻く経営環境は依然として予断を許さない状況が続くものと予想されます。
このような状況のもと、当社は第10次中期経営計画に定める重点施策を着実に実行してまいります。販売面では引き続き車載市場、産業機器市場、ICT市場の3つの戦略市場への拡販を進めてまいります。他方で車載市場と産業機器市場の本格的な回復は下期以降となる見込みであることから、安定的な成長が期待されるICT市場に一層注力してまいります。また、生産面では高付加価値品を中心に生産能力の増強や生産設備の移管等を通じて最適地生産を実現し、カントリーリスクの高まりに備えてまいります。
なお、当社を含む被告らは、電解コンデンサ、タンタルコンデンサ及びフィルムコンデンサに関するイスラエル競争法違反等について損害賠償等を求める集団民事訴訟の提起を受け、訴訟対応を継続しておりました。
2024年12月、当社は損害賠償等の責任を認めておりませんが、諸般の事情を総合的に勘案した結果、集団訴訟原告団との間で和解金として350万米ドルを支払うことに合意し、和解契約を締結しました。本和解は、裁判所の承認手続きを経て、正式に効力発生します。本和解の効力発生により、各国において当社グループに対して現在までに提起されていたアルミ電解コンデンサ等の取引に関する損害賠償等を求める民事訴訟のうち、現在未解決のものは台湾で提訴を受けている案件1件のみとなりますが、重要性のある損失は発生しないと当社では認識しております。
また、当社の子会社であるSingapore Chemi-Con(Pte) Ltd.( 以下「SCC」といいます) は、DysonManufacturing Sdn. Bhd.(以下「Dyson」といいます)に販売した部品に関して、2024年12月、Dysonより、シンガポール国際商事裁判所において訴訟を提起されました。Dysonは、SCCに対して、1億4,554万4,762英ポンドの損害賠償等の権利があると主張しております。しかしながら、かかる主張は妥当ではないものと考えており、今後、SCCの責任が否定されるよう、裁判の中で適切に主張・立証していく所存です。
なお、2026年3月期(2025年度)の連結業績予想につきましては、売上高1,460億円(前期比19.0%増)、営業利益75億円(前期比100.5%増)、経常利益58億円(前期比269.8%増)、親会社株主に帰属する当期純利益44億円(前期親会社株主に帰属する当期純利益37百万円)を見込んでおり、為替レートは1米ドル145円を前提としております。
2025年6月5日
代表取締役社長 今野 健一