製品ラインアップ電気二重層キャパシタ

電気二重層キャパシタの基礎知識

電気二重層キャパシタの特徴

  • 電気二重層キャパシタの特徴
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電気二重層キャパシタはコンデンサに分類される蓄電デバイスで、Electric Double Layer Capacitor の頭文字からEDLCとも呼ばれます。よく知られている蓄電デバイスの二次電池とその性能を比較すると、エネルギー密度(単位重量または容積あたりに蓄えられるエネルギーの量)では劣りますが、出力密度(単位重量または容積あたりで瞬間的に取り出すことができる電力の大きさ)で勝るほか、大電流での充放電の繰り返しによる性能劣化が極めて少なく、寿命が長いなどの優れた特徴があります。

代表的な蓄電デバイスの関係をエネルギー密度と出力密度を基準に表すと【表1】のようになります。電気二重層キャパシタは、アルミ電解コンデンサやセラミックコンデンサなどのいわゆる"コンデンサ"と、リチウムイオン電池などの"二次電池"の特性を補完する性質を持っています。より多くのエネルギーを必要とする用途では二次電池、瞬間的な充電・放電や大電流による充電・放電、その繰り返しへの耐久性が求められる用途では電気二重層キャパシタが向いています。
また、電気二重層キャパシタは完全放電が可能です。全エネルギーを放出することができない二次電池に比べると、電気二重層キャパシタは蓄電量に対して取り出せるエネルギーの割合が大きいという特徴を持っています。保持しているエネルギー量の変化に比例して電圧が変動する点は二次電池と同じですが、0Vまで放電できる電気二重層キャパシタは電圧の変動も大きくなるため、負荷によっては電力変換機(DC/DCコンバータ)による電圧安定化が必要になります。一方この性質を利用して、端子電圧を測定することにより、充電したエネルギーの残量を正確に知ることができるというメリットを持っています。

主な特徴
  • 数百万サイクルの充放電が可能(長寿命)
  • 大電流による急速充放電が可能(高い出力密度)
  • 充放電時の損失が少ない(低い内部抵抗)
  • 完全放電が可能(放電深度に制限がない)
  • 構成材料に重金属を含まない
  • 異常時の安全性が高く、外部短絡しても故障しない
【表1】蓄電デバイスの分類

蓄電デバイスの分類

電気二重層キャパシタの構造

【図1】電気二重層キャパシタの構造

【図1】電気二重層キャパシタの構造

電気二重層キャパシタは表面実装型やコイン形など、静電容量が1F以下の小型品から、ラジアルリード形、ラミネート形、大型のネジ端子形まで多彩な大きさと形状で商品化されており、大型の製品では1セルで2000Fを超える静電容量を持つ製品もあります。

素子の構造は、アルミ箔上に形成した電極を巻き取った構造の"巻回形"と、積み重ねた構造の"積層形"に大別できます。形状の違いはありますが、いずれのタイプも基本的な蓄電メカニズムと構造原理は同じで、【図1】に円筒形状をした大型製品の内部構造と、その構造原理を示します。

電気二重層キャパシタの電極材料には、比表面積が大きい活性炭が使われています。【図1】に示すとおり、電解液と電極の界面に極めて短い距離を隔てて電荷が配向する現象(電気二重層)を利用して物理的に電荷を蓄えています。化学反応によりエネルギーを蓄える二次電池とは異なり、活性炭表面におけるイオンの物理的な吸着のみでエネルギーを蓄えているため、構成材料の劣化がほとんどなく長寿命です。その特徴を活かし、定期的な部品交換が困難な(あるいは著しいコストアップになる)用途や設置場所において、交換頻度の低減やメンテナンスフリーを目的に、電気二重層キャパシタが蓄電デバイスに採用されている事例もあります。

電解液は大きく水系、有機系、イオン液体に分類され、多くの製品で採用されている有機系電解液の代表例には、溶媒が異なるプロピレンカーボネート系(PC系)とアセトニトリル系(AN系)の2種類があります。AN系電解液は内部抵抗が低いという優れた性質を持っていますが、その反面、電解液の揮発温度が低いために使用環境温度が限られることと、発火の際に極めて有毒なシアンガスを発生する恐れがあることから、日本ケミコンでは安全性を重視した、非アセトニトリル系の有機系電解液を使用しています。

大型の電気二重層キャパシタは、搭載装置で必要となる電圧や静電容量を得るために、複数のセルを直列や並列につなぎ合わせたバンク構造で使用されるケースが多く見られます。キャパシタメーカーによっては、複数のセルをバンクに組み、さらに各セルの電圧のバラツキを抑えるための"バランス回路"を内蔵したキャパシタモジュールを標準品としてラインアップしています。また、耐振性や耐衝撃性を高めた特殊仕様のモジュールを用意するメーカーもあります。モジュール単位の接続で蓄電ユニットを構成できるため、ユーザーにおける機器の試作や導入検討を容易にしています。

電気二重層キャパシタの用途

電気二重層キャパシタには、静電容量が1F以下の小型製品から、2000Fを超える大型製品まで幅広いバリエーションがあります。形状も表面実装型からネジ端子形まで実に多彩です。

小型製品と大型製品では用途も大きく変わってきます。以前から市場を確立している小型・中型の製品では、携帯電話やスマートフォン、AV機器、玩具やゲーム機などに広く使用されており、その用途はリアルタイムクロックやメモリのバックアップ電源用が中心になっています。OA機器のプリンタやプロジェクタ向けでは、高速起動や省エネ化など、性能向上を目的とした補助電源用としても使われています。近年ではスマートメーターのバックアップ電源用途に採用された事例があるほか、今後のターゲットには多機能化するスマートフォンのピーク電力アシストやカメラのフラッシュ用途などが挙げられており、新製品開発による市場拡大が期待されます。
一方の大型製品は、主に電力の貯蔵と安定化、電力アシスト、バックアップ電源、エネルギー回生などに使われており、特にエネルギー問題への意識の高まりから、電気二重層キャパシタの特徴を活かした"省エネ型機器"の開発が各分野で進められています。電気二重層キャパシタのみを蓄電デバイスに用いた事例もあれば、二次電池との組み合わせにより特性を補完し合う事例も数多くあります。大型製品の主な実用化事例を【表2】にまとめますが、このほかにも多くの分野で実用化され、またその検討が活発化しています。

日本ケミコンの電気二重層キャパシタ"DLCAP™(ディー・エル・キャップ)"が、乗用車の"減速エネルギー回生システム"の蓄電デバイスに採用されました。世界で初めて乗用車に搭載されたキャパシタ型の減速エネルギー回生システムは、燃費の改善に貢献するシステムです。そのシステムに日本ケミコンの"DLCAP™"が選ばれたのは、安全性を重視したPC系電解液を使用して高い信頼性を実現しながらも、独自の技術で内部抵抗を大幅に抑えた新製品を開発できたことがきっかけになっています。

電気二重層キャパシタの開発の方向性には低内部抵抗化のほかに、高耐電圧化、大容量化、高耐熱化などが挙げられ、ニーズの高まりと共に技術革新が進んでいます。日本ケミコンの製品ラインアップは、ネジ端子形では低抵抗な高出力タイプの"DXEシリーズ"、高耐熱タイプの"DXGシリーズ"、高耐電圧タイプの"DXFシリーズ"の3種類、リード端子形では"DKAシリーズ"となっています。また電圧バランス回路を内蔵したキャパシタモジュールを用意している製品もあります。

今後エネルギーマネジメントの重要性が一層高まり、自動運転等での冗長電源システム、新たな機能を得たICT関連機器や省エネ型機器、エネルギーの高効率利用のための蓄電システム、自然エネルギー導入に伴う電力品質確保と電力網の安定化対策等の開発が加速すると見られます。こうした分野においても電気二重層キャパシタの市場が拡大していくと予想されています。

【表2】電気二重層キャパシタの主な実用化事例
主な用途 使用機器 主な目的と効果
電力の貯蔵 道路鋲(太陽光発電+LED) 配線レスとメンテナンスフリー
交通情報収集端末(太陽光発電+センサー) 配線レスとメンテナンスフリー
LED街路灯(太陽光発電+LED) 配線レスとメンテナンスフリー
電力の安定化 大型瞬低対策装置 短時間大電力の瞬低対策(危機管理)
電源アシスト デジタル複合機(複写機) 省エネ化、ウォーミングアップ時間短縮
バックアップ電源 配電線故障監視装置 停電時の信号発信、メンテナンスフリー(危機管理)
災害対策用自動販売機 停電時のバックアップ電源、手動式発電の蓄電(危機管理)
各種車載用システム 電源の冗長性アップ、タフネス向上
エネルギー回生 ハイブリッド型トランスファークレーン ディーゼルエンジンの小型化と省エネ化
電動式フォークリフト バッテリーアシストによる稼働時間改善
ハイブリッド型建設重機 ディーゼルエンジンの小型化と省エネ化
輸送機器 燃費改善、CO2削減

電気二重層キャパシタの寿命性能

電気二重層キャパシタは有限寿命のデバイスです。その寿命は温度、湿度、振動等の環境条件や、印加電圧、充放電条件等の電気的条件などの使用条件により影響を受けます。電気二重層キャパシタの保証寿命は、カタログ中で高温度負荷特性として明記しております。

周囲温度と寿命

電気二重層キャパシタの寿命は【図2】のように使用される周囲温度により大きく影響を受けます。実使用時の温度を低く設定すれば、長期の寿命を期待できます。

【図2】耐久性試験(温度パラメータ)

耐久性試験(温度パラメータ)

耐久性試験(温度パラメータ)

印加電圧と寿命

電気二重層キャパシタの寿命は【図3】のように使用される電圧により大きく影響を受けます。実使用時の印加電圧を低く設定すれば、長期の寿命を期待できます。

【図3】耐久性試験(電圧パラメータ)

耐久性試験(電圧パラメータ)

耐久性試験(電圧パラメータ)

充放電による自己発熱

電気二重層キャパシタは内部抵抗を持っているため、充放電電流により内部発熱し、寿命に影響を与えます。特に大電流で連続して充放電を行うような用途では温度上昇を伴うため、劣化が加速します。発熱は充放電パターンにより大きく変化するため、この発熱分の温度上昇も考慮する必要があります。また、大電流放電をする場合は、放電開始時に電圧ドロップが発生しますので電圧低下分を考慮する必要があります。

寿命推定について

電気二重層キャパシタの寿命加速因子としては、温度と継続した電圧印加が大きく影響を与えます。電気的特性の変化と試験時間の平方根√tとの間には【図4】のような直線関係があり、次式のように表すことができます。

ΔC=k√t+a

kは寿命加速係数で、温度、電圧の組み合わせにより異なります。実使用条件におけるkを求めることによって寿命推定が可能になります。
k及びaは温度、電圧、シリーズにより異なりますので、詳細は弊社までお問合せください。

【図4】耐久性試験の√tプロット例

【図4】耐久性試験の√tプロット例