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ナノ結晶合金コイルFL-Vシリーズのフェライトコイルに対する優位性

目次
  1. フェライトコイルとFL-Vコイルの仕様比較
  2. フェライトコイルとFL-Vコイルのインピーダンス比較
  3. フェライトコイルとFL-Vコイルの簡易コモンモードフィルタ特性比較

フェライトコイル仕様と同等の電気特性を、ナノ結晶合金コイルFL-Vシリーズで置き換えた場合、「小型化」、「低DCR」、「低浮遊容量」のメリットがあります。本記事では、以下の項目で比較した、フェライトコイルに対するナノ結晶合金コイルFL-Vシリーズの優位性をご紹介します。

比較項目
比較条件
FL-Vコイルとフェライトコイルについて以下2項目を共通条件として、フェライトコイルからFL-Vコイルに置き換えた場合のメリットを考察します。
  1. インピーダンス:100kHz~500kHz間でインピーダンスをほぼ同等にします。今回のコイル仕様では約2.6kΩ/250kHzとしています。
  2. 銅線:線材共通で銅線径もほぼ同等とします。
 
用途 大電流向けコモンモードノイズ除去
フェライトコア 一般的なMn-Znフェライト(比透磁率5,000相当)
定格 20A
インピーダンス 2.6kΩ (250kHz)
DCR(銅線の直流抵抗) 4.0mΩ/片コイルあたり
浮遊容量C(巻線による銅線間に発生) 13pF
コイル体積 64cm3(コアサイズ:47mm、コアケース入り)
【フェライトコモンモードコイル仕様】


上記フェライトコイル仕様と同等の電気特性をFL-Vコイルで置き換えた場合、次のようなメリットがあります。
  • コイルサイズの小型化 → 実装面積、空間の縮小化、軽量化
  • 低DCR → 直流ロス低減、低発熱
  • 低浮遊容量 → ノイズ除去帯域の広帯域化

その理由を以降でご説明します。
 
1. フェライトコイルとFL-Vコイルの仕様比較
FL-Vコイルで比較項目を満足させた場合、コイルサイズは小型化が可能でありコイル実装空間の縮小化に貢献します。以下に、外形比較図とFL-Vコイルへ置き換えによる、電気特性を含めた効果を表にしました。
 
フェライトコイル仕様 当社FL-Vコイル仕様
フェライト FL-Vサイズ
使用コア外径: 47mm (コアケース入り)
巻線仕様: ⌀1.6mm×2パラ
使用コア外径: 28mm (コアケース入り)
巻線仕様: ⌀1.5mm×2パラ
比較項目 フェライトコイル 当社FL-Vコイル FL-Vコイル置き換えによる効果
コア体積[cm3] 17.1 4.9 71%改善、コイル小型化、軽量化へ貢献。
コイル体積[cm3] 64.1 29.5 54%改善、コイル実装空間の縮小化。(注意1)
コイル重量[g] 160.0 73.0 54%改善、コイル実装機器の軽量化。
DCR[mΩ] 4.0 2.4 40%改善、直流ロスの低減化。低発熱。
浮遊容量[pF] 13.0 8.0 38%改善、高周波側ノイズ除去能力改善。
【表1】フェライトコイルから当社FL-Vコイルへ置き換えによる効果

(備考1)インピーダンスはフェライトコイル、FL-Vコイル共に約2.6kΩ±10%/約250kHzで共通化。
(備考2)コイル体積はコイル内径部空間を含みません。
(備考3)DCRは片コイルあたりの銅線抵抗値。
(注意1)コイル体積については、使用するコアサイズが小型になるに従いフェライトコイルとFL-Vコイルとの体積差は小さくなります。理由としては小型コアサイズに対して銅線径やコアケース肉厚などの影響が大きくなるため、また放熱性の懸念があるためです。

2. フェライトコイルとFL-Vコイルのインピーダンス比較
次に、比較条件を満足したフェライトコイルとFL-Vコイルのインピーダンス周波数特性比較と、簡易的なコモンモードフィルタを作成し、フェライトコイルとFL-Vコイルを使用した場合のノイズ減衰特性を比較します。
 
フェライトコイル、当社FL-Vコイルインピーダンス特性概略図
図1. フェライトコイル、当社FL-Vコイル
インピーダンス特性概略図

図1は、フェライトコイルとナノ結晶合金コイル(当社FL-Vシリーズ)のインピーダンス特性の違いをイメージとして表現しています。

比較条件より、周波数ポイントAの約250kHzにおけるインピーダンスを同等にします。ここでフェライトコイルに対する当社FL-Vコイルの特徴として以下2点があります。
  • 帯域①の低周波帯域インピーダンス改善
    →FL-Vコイルでは比透磁率がフェライトコイルより高く、少ない巻数で高いインピーダンスが得られます。
  • 帯域③の高周波帯域インピーダンス改善
    →巻線数が少ないことにより、浮遊容量(巻線間容量)が小さくなり、共振点をフェライトコイルに比べて周波数ポイントB点(約1MHz~数MHz)まで伸ばすことができます。
    (巻線間容量の説明は、コモンモードチョークコイルの周波数特性の1. 浮遊容量による影響をご参照ください。)

フェライトコイルは比透磁率がFL-Vコイルに比べて低く、高いインピーダンスを得るためには巻線数を増やす必要がありますが、巻線数増加は、共振周波数を低下させ高周波帯域のインピーダンス低下を招きます。フェライトコイルで高いインピーダンスを得ようとすると、インピーダンスを高く維持できる帯域はFL-Vコイルより狭くなり、比較的低い周波数で共振ピークが発生しやすくなります。

まとめると、FL-Vコイルは、帯域②の特性をフェライトコイル同等とした場合、帯域①及び帯域③の広帯域にわたり、フェライトコイルより高いインピーダンスを維持できます。これはFL-Vコイルを使用することによりノイズ除去能力も広帯域での改善が期待できます。
 
3. フェライトコイルとFL-Vコイルの簡易コモンモードフィルタ特性比較
コモンモードフィルタ回路構成図

上図回路構成において、Yコンデンサ(Cy)は、セラミックコンデンサ0.5μFとします。また、ノイズ減衰量として約100kHzで-60dB前後を想定し、カットオフ周波数fcは、3kHz~4kHzとなります。
フェライトコイル、当社FL-Vコイルを使用したコモンモードフィルタ特性図
(備考1)2.5MHz共振点は、Cy(セラミックコンデンサ)の周波数特性によります。
(備考2)2.5MHz共振点以降のフィルタ減衰量悪化は、CYのインダクタンス成分の他、コイル巻線容量によるインピーダンス低下の影響となります。
(備考3)高周波側特性は測定器の精度からmax40MHzとしています。


図2よりフェライトコイル、当社FL-Vコイルを使用したコモンモードフィルタ共に100kHzで-50~-60dBの減衰特性となり、ほぼ設計値通りとなっています。また、図1のインピーダンスの特徴と、図2のフィルタ特性から、FL-Vコイルを使用することにより、約3kHz~200kHzあたりの低周波帯域と1MHz以上の高周波帯域において、ノイズ減衰特性を改善し、さらにコイルの小型化、軽量化が実現できます。


まとめ
当社FL-Vシリーズコイルとフェライトによるコモンモードコイルについて以下を考察しました。
  • インピーダンス比較(概略)
  • コモンモードフィルタ比較

今回、大電流向け用途に絞ったコイル仕様で評価を行いましたが、今後コモンモードフィルタ設計の際には、是非当社FL-Vシリーズコイルをご検討ください。
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