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アモルファス磁性体SMコイルを用いた大電流対応LCフィルタ

スイッチング素子を用いたパワーエレクトロニクス機器はエネルギー伝送時に高速のスイッチングを行うため、ノイズが発生しやすくなります。また、モータなどの誘導性負荷では電流の急激な変化によってスパイク状の鋭いノイズが発生します。本資料では、DCパワーラインの高周波ノイズ抑制を目的として、当社のアモルファス磁性体SMコイルと導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサによるLCフィルタ(ローパスフィルタ)の減衰特性の効果を検証しました。

[1]ローパスフィルタの種類

●ローパスフィルタの構成例

直流電源ラインに挿入し、不要な高周波ノイズを除去します。
直流電源ラインで用いるローパスフィルタは電力ロスが少ないLCフィルタや、LCフィルタの段数を多くしたπ型フィルタ等が用いられます。

※本資料では、表のLCフィルタについて、最適部品と回路特性について説明致します。

[2]ローパスLCフィルタの設計

●LCフィルタのインピーダンスとカットオフ周波数

LCフィルタのインピーダンスとカットオフ周波数は下式で求められます。一般的にフィルタのカットオフ周波数はスイッチング周波数の1/10程度とします。

[3]寄生成分による影響

コンデンサやコイルなどの受動部品は寄生成分を持っており、高周波において十分な性能を引き出せなくなります。

コンデンサ、コイルの自己共振が生じない周波数帯域でLCフィルタを構成する事により理想的な減衰特性を実現します。

[4]LCフィルタ特徴・注意事項

1) 減衰量は下式にて算出します。
2) LCフィルタ設計ではカットオフ周波数fcでのQピーク発生に注意が必要です。 (このQは共振の鋭さを示します。)
3) 減衰特性は-40dB/dec.となります。

回路負荷抵抗が軽い場合、Qピークを抑制する為の抵抗RQと、このRQに直流電圧の印加を防止する為のCQが必要です。このCQは、等価直列抵抗(ESR)がRQに比べて小さい物を選定します。RQは以下の式で計算します。

【使用部品型番と本資料での略称について】

●コイル

品番 LESM050010P1BV0E
定格 2.4μH/0A, 1.2μH/50A (20kHz)
2.0μH/30A(参考値)・・・本資料で使用
略称 SMコイル

●導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサ

品番 HHSE630ELL101MJC5S
品番略称 HSE100μF/63V
定格 100μF/63V
略称 ハイブリッド、ハイブリッドコンデンサ

●アルミ電解コンデンサ(サンプル1)

品番 EGXE350ELL101MJC5S
品番略称 GXE100μF/35V
定格 100μF/35V
略称 アルミ電解

●アルミ電解コンデンサ(サンプル2)

品番 EGPD250ELL472MK35H
品番略称 GPD4700μF/25V
定格 4700μF/25V
略称 アルミ電解

[5]コンデンサ品種による特性の違い

●ハイブリッド、アルミ電解(同容量の場合)(C=100μF)

ハイブリッドコンデンサは、LCフィルタ減衰域で減衰特性-40dB/dec.を実現可能です。アルミ電解コンデンサを使用した場合、約30kHz以降の減衰特性は-20dB/dec.となってしまいます。この理由はコンデンサの周波数特性に原因があります。

コンデンサの機能として、インピーダンス|Z|が等価直列抵抗(ESR)より大きい事が必要です。ハイブリッドコンデンサは、約200kHzまでコンデンサ機能が維持出来ています。一方、アルミ電解コンデンサでは、等価直列抵抗(ESR)が大きい為、約30kHzからインピーダンスがESR成分となり、結果30kHz以降は実質LRフィルタとして動作し、減衰特性は-20dB/dec.となってしまいます。

●ハイブリッド,アルミ電解 (減衰量要求値が同じ場合)(要求値-40dB/100kHz)

アルミ電解コンデンサで減衰量-40dB/100kHzを実現する為には大容量コンデンサ(4700μF)が必要です。またハイブリッドコンデンサに比較してフットプリントで1.3倍、高さ3倍、重量5倍、体積5倍程度と部品外形も大型になってしまいます。

アルミ電解コンデンサでは等価直列抵抗(ESR)が大きい為、約4kHzでインピーダンスがESR成分となり、以降は実質LRフィルタとなる為、減衰特性は-20dB/dec.になってしまいます。

[ESRの影響まとめ]
※ESR大⇒減衰量悪化⇒大容量化⇒大型化。
※ESR小⇒理想減衰量⇒小容量化⇒小型化。

[6]他コイルとの比較

※カットオフ周波数確認の為Qピーク有りで測定

直流電流0Aではトロイダルコイルを使用した場合、目標減衰ポイントでの減衰量が-40dB以下となりSMコイルより有利となりますが、トロイダルコイルは、カットオフ周波数が重畳電流値により変動し、重畳電流30Aでの減衰量は、SMコイルとほぼ同等となります。この理由はトロイダルコイルの直流重畳特性に原因があります。

直流電流0AではトロイダルコイルのインダクタンスはSMコイルに比べて約4倍程度大きいですが、重畳約30A以降ではSMコイルとトロイダルコイルのインダクタンスはほぼ同等となります。電流重畳時のトロイダルコイルのインダクタンスの変動は、フィルタ構成時、直流電流値によるカットオフ周波数変動の要因になっています。一方、SMコイルはインダクタンスの電流依存性が少ない為、カットオフ周波数の変動が小さく、安定した減衰特性が得られています。

また、SMコイルは直流抵抗(DCR)が小さい為、重畳30A時、トロイダルコイルに比べて低電力ロス、低発熱であり有利です。

[7]温度特性の影響

コンデンサの温度特性

●ハイブリッド HSE100μF/63V(外形Φ10×12.5L)

ハイブリッドコンデンサは、-40℃、25℃、135℃で200kHz程度までコンデンサとしての機能を発揮できます。
ハイブリッドコンデンサは低ESRで温度依存性も少なく理想的な減衰特性が得られます。

●アルミ電解 GXE100μF/35V(外形Φ10×12.5L)

アルミ電解コンデンサは-40℃での低温環境下でのコンデンサとしての機能は7kHz程度が限界となります。なお温度が高くなるに従いコンデンサ機能が改善され、135℃では約70kHzまでコンデンサとして使用可能となります。
アルミ電解コンデンサは、ESRの温度依存性が大きく減衰特性が変化してしまいます。

SMコイルの温度特性

SMコイルは、-40℃,25℃,135℃において、インダクタンスの温度依存性は殆どありません。

【注意事項】

コンデンサの使用温度について

高温度(カテゴリ上限温度を越えた温度)で使用しないでください。カテゴリ上限温度を超えて使用されるとき、コンデンサの寿命が著しく短くなったり、圧力弁動作などの破損に至ります。温度は機器の周囲温度、機器内の温度のみでなく、機器内での発熱体(パワートランジスタ、抵抗等)の放射熱、リプル電流による自己発熱なども含めたコンデンサの温度を確認してください。また、コンデンサの裏面に発熱体等を配置しないでください。なお、コンデンサの寿命は使用温度の影響を受けますので、カテゴリ温度範囲内でご使用願います。温度を低く設定すると長期の寿命が期待できます。

LCフィルタの温度特性

LCフィルタに温度依存性があると、減衰特性やカットオフ周波数が変化してしまいます。ハイブリッドコンデンサ使用の場合とアルミ電解コンデンサ使用の場合を比較します。

●ハイブリッド使用

SMコイル、ハイブリッドコンデンサ共に温度依存性が少ない事、及びハイブリッドコンデンサの低ESRより、フィルタ減衰特性も温度に依存せず理想的な-40dB/dec.の特性を得ることができます。

●アルミ電解使用

一方、アルミ電解コンデンサでは、温度依存性が大きく高温環境下でESR低下による減衰特性の改善は見られますが、低温での使用は、ESRが増大しコンデンサとしての機能が著しく低下してしまいます。結果として、容量の温度依存性によりカットオフ周波数が上昇し、目標の周波数での減衰量も得られなくなってしまいます。

[8]技術支援ツールの活用

SPICEモデルによるLCフィルタの一例

当社では各種コンデンサ、コイルのSPICEモデルを用意しております。実機における評価前の効果の確認が可能です。

技術支援ツールSPICEモデルを使用いただくことにより、より実機に近い回路特性を推測できます。

技術支援ツールSPICEモデルはこちら

[9]DC/DCコンバータによる実機テスト

市販品DC/DCコンバータの出力部において、当社コンデンサとコイルを組み合わせたLCフィルタによるノイズ抑制効果を確認しました。

●実機テストブロック図

DC/DCコンバータ出力にSMコイル+ハイブリッド100μFによるLCDフィルタを挿入し、定格30A出力時における電源のSWノイズが10mV以下に減衰されたことを確認しました。
(備考)10mVはオシロスコープの測定限界となります。

[10]まとめ

※SMコイルとハイブリッドによるLCフィルタについて

SMコイルの低DCRによる低電力ロスとハイブリッドコンデンサの低ESR、温度安定性の複合効果として、以下3項目の利点があります。

1) 大電流電源ラインに使用可能。
2) 減衰特性-40dB/dec.が得られる。
3) 環境温度により減衰特性が変化しない。

【補足1】
ハイブリッドコンデンサ使用の場合、急峻な減衰特性(理想減衰量)が得られる為、カットオフ周波数fcを高く設計できます。これによりコンデンサの低容量化と部品の小型化に貢献できます。

※SMコイルと電解によるLCフィルタについて

一方、アルミ電解コンデンサはESRが高く、また温度変化も大きくなりますが、以下の条件であれば選択の余地はあると考えられます。

1) 大容量コンデンサが必要。
2) 減衰特性が-20dB/dec.でも可。
3) 温度一定。
4) 外形サイズが不問。

【補足2】
アルミ電解コンデンサを使用する場合、ESRが高い為、減衰特性は-20dB/dec.となりますが、カットオフ周波数fcを下げることにより目標周波数での減衰量を得ることが可能となります。

※各コンデンサ特徴要約

(fc:カットオフ周波数)

アルミ電解コンデンサ: fc低→容量大→コンデンサ大型化
ハイブリッドコンデンサ: fc高→容量小→コンデンサ小型化

[11]本資料取扱注意事項

  • ■本資料は、製品の特性に対する参考データであり、製品の特性を保証するものではありません。
  • ■採用に際しては、製品をより正しく、安全にご使用いただくために、本資料に依拠する事なく、必ず製品を実装し、試験等を行なった上で決定してください。
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